2025 Proposed Cardano Roadmap - Japanese translation
2025年のビジョンおよびロードマップ
ビジョン
Cardanoは、分散型グローバル経済のための堅牢でスケーラブルな基盤となる未来を描く。これはLeiosプロトコルによるL1パフォーマンスの大幅な向上、現在のコードベースの最適化、HydraやMidgardのようなL2ソリューションの機能拡張によって達成される。APIの強化や堅牢なツール、分散化に力を注いで開発者のエクスペリエンスを向上させることで、Cardanoは開発者が革新的でインパクトのあるアプリケーションを構築できるようにすることを目指している。さらに、アカウントの抽象化やカストディアン規制型ステーブルコインなどの高度な機能を含むプログラム可能な資産を拡大していくことにより、分散型金融をはじめとする新たな可能性も開かれるだろう。このビジョンは、研究、コミュニティコラボレーション、およびCardanoエコシステムの長期的な持続可能性への強いコミットメントを強調している。
このビジョンを実現するためには、エコシステムの繁栄が不可欠である。これには、イノベーションを促進し、新しいユーザーや開発者を惹きつけ、現実世界への適用を促進する多面的なアプローチが必要である。この戦略の重要な要素は、特定の業界ニーズに対応するCardanoベースのソリューションの開発とデプロイに焦点を当てながら、さまざまなセクターにわたる組織との戦略的パートナーシップを育成することである。私たちは、セキュリティ、スケーラビリティ、分散化というCardanoのコア原則に沿ったコラボレーションを優先する。
戦略的なパートナーシップを超えて、活気に満ちたエンゲージメントの高いコミュニティを育成することが最重要である。私たちは、開発者がCardanoで革新的なDAppやツールを構築できるようにするイニシアチブに投資する。これには、インキュベーターやアクセラレータープログラムの確立、定期的なハッカソンの開催、開発者への助成金の提供、有望なプロジェクトを支援するためのエコシステム基金の拡大などが含まれる。さらに、APIの強化、堅牢なツール、包括的なドキュメントを通じて開発者のエクスペリエンスを向上させることを優先し、開発者にとって、Cardanoが始めやすくインパクトのあるアプリケーションを構築しやすいものとする。
最後に、強固で協力的なコミュニティを構築することは、長期的な成功のために不可欠である。私たちは、ミートアップ、オンラインフォーラム、アンバサダープログラムなど、Cardanoコミュニティを育成しエンゲージさせるイニシアチブに焦点を当てる。戦略的パートナーシップ、開発者サポート、コミュニティエンゲージメントを組み合わせることで、Cardanoの普及を促進し、その可能性を最大限に引き出す繁栄したエコシステムを構築できると確信している。
コミュニティの短期ビジョンの一般的なテーマとしては、コミュニティロードマップ調査から分析された通り、スケーラビリティ、相互運用性、ユーザビリティの向上に焦点を当てている。
ロードマップ
2025年のロードマップは、以下に示すように、コミュニティメンバーから提案された項目で構成されている。このロードマップの大部分またはすべてにおいて進展が見られることが想定されている。なお、ロードマップの範囲は固定されたものではなく、コミュニティからの新たな貢献にも開かれている。
L1エンジンのスケーリング
L1のパフォーマンスは、Cardanoの広範な普及およびCardanoがブロックチェーンコミュニケーションの中心的ハブとなることを可能にするための鍵となる。これは、コードベースの最適化と並列化を増加させるアーキテクチャーの強化を組み合わせることで達成される。
アーキテクチャーの卓越性
Cardanoはブロックチェーン技術の最前線という位置付けを維持することにコミットしている。これには、ソフトウェアアーキテクチャーのベストプラクティスを継続的に評価することが含まれる。私たちは、進化を続けるアーキテクチャーパターンの状況を認識し、世界でもっとも信頼性が高くグローバルに分散されたブロックチェーンの運用を含む、Cardano独自のニーズに最適なアプローチを探求し、実装することに専念している。
モジュラー設計:Cardanoコードベースのモジュラー設計アプローチを優先し、コンポーネントの独立した開発とデプロイを可能にすると同時に、Cardanoの基本であるタイミング、セキュリティ、信頼性の要件を満たす統合的で効率的なシステムを維持する。これにより、プラットフォームの進化に対応できる柔軟性と適応性が実現する。
パフォーマンスの最適化:Cardanoアーキテクチャーのパフォーマンスを継続的に分析および最適化する。その際、さまざまなアーキテクチャーパターンを探求および評価するが、誤解を招く平均ケースの動作ではなく、システム全体の動作に影響するワーストケースの動作に注目して、最大の効率とスケーラビリティを確保する。これには、さまざまなCardanoコンポーネントに最適なアプローチを見つけるために、確立されたパターンに代わる有望な代替案を調査し、ベンチマークすることが含まれる。
形式手法と形式的検証:セキュリティと信頼性はブロックチェーンシステムにとって最優先事項である。ここでは形式手法と形式的検証を活用して、適時性やワーストケースの動作を含むCardanoアーキテクチャーの重要なコンポーネントを厳密に特定し、分析する。これにより、各コンポーネントの正しさを数学的に証明し、脆弱性のリスクを最小限に抑えることができる。私たちは、Cardanoの文脈における適用性と有効性を高めるために、形式手法による研究開発に引き続き投資する。
研究と探求:私たちは、Cardanoが技術的卓越性の最前線にとどまり、絶えず変化するブロックチェーンの状況に適応できるように、最先端のアーキテクチャーパターンとテクノロジーを研究し、探求するためにリソースを使用する。これには、業界動向の綿密な監視と、特に複雑なリアルタイム分散システムのためのソフトウェアアーキテクチャー専門家とのコラボレーションが含まれる。
Leios
Leios(レイオス)は、Cardanoのスケーラビリティとトランザクションスループットを大幅に向上させるために設計された画期的なイノベーションである。これは、従来のシーケンシャルモデルとは一線を画す、ブロック生成への新たなアプローチを導入する。
Leiosは並列ブロック生成プロセスを活用する。単一の線形ブロックチェーンの代わりに、ステークプールオペレーター(SPO)によって別個に生成され承認された複数の「インプットブロック」を導入する。これらの承認は「承認ブロック」に集約され、最後に「ランキングブロック」がすべてのインプットブロックにわたるトランザクションの最終的な順序と妥当性を決定する。
この並列アプローチは、Cardanoブロックチェーンのセキュリティと分散性を維持しながら、トランザクションのスループットを劇的に向上させる可能性を秘めている。
2025年のロードマップには、Leiosの開発と実装の前段階として達成すべき重要なステップが含まれる。
ノード実装をガイドし、正確さを保証するための形式仕様記述を開発する。
現実のネットワーク条件でLeiosの理論設計を検証し、最適なパラメーターを特定するための広範なシミュレーションを実施する。
Cardanoノードをリファクタリングして、Leiosの統合を容易にし、スムーズで効率的な動作を保証する。
最適化
現在のコードベースを最適化し、技術負債に対処してパフォーマンスを向上させる。これにより、パラメーター委員会によるより柔軟なパラメーター調整が可能となり、ハードフォークを必要とせずにスケーラビリティを向上させることができる。
ノードとの統合度を高め、既存のネットワーク層を活用することで、Mithrilの分散性を強化する。
グラインド攻撃防止
CPUベースのグラインド攻撃を緩和し、決済速度とネットワークセキュリティを向上させるための対策を導入する。
LSMの統合
LSM(Log-Structured Merge)ツリーを統合することで、ノードのメモリー要件を減らす。当面はUTXOセットに焦点をあてる。
流動性の獲得
他のエコシステムからの流動性を高めることは、Cardanoのユーザー基盤を拡大するために不可欠である。
ゼロ知識証明を利用して、Cardanoがビットコインの分散型DeFi層として機能することを可能にする。
Babelフィー(ネスト型トランザクション)は、初期のADAを保有していないユーザーに対して、部分的なトランザクションを受け入れて複数の当事者から組み合わせることができる分散型マーケットプレイスを介して、L1でのトランザクションをサポートする。ここでマーケットプレイスは、ユーザーが取引所で前もってADAを購入しなくても、トランザクションに使用し、最低必要額を満たすことができるADAを得られるよう、ADAの裁定取引を行うことができる。
L2の拡張
トランザクション量の増加に対応するため、CardanoはL2ソリューションの機能拡張に注力する。
パートナーチェーンのAVS層
このフレームワークは、堅牢で安全な基盤となる価値「検証」層を活用して、独立したカスタマイズ可能なブロックチェーンネットワーク(パートナーチェーン)を作成する方法を概説する。このアプローチにより、CardanoのOuroborosプルーフオブステーク型コンセンサスメカニズムのセキュリティと信頼性の恩恵を受けながら、より優れた柔軟性と実験が可能になる。このフレームワークは、パートナーチェーン間のシームレスな価値移転を促進するように設計されており、分散型オープン標準の基礎を形成する。
主な利点としては、カスタマイズ可能なパートナーチェーンパラメーター、AVSの安定性に影響しない新機能のプロトタイピング、AVSセキュリティの継承、パートナーチェーンのスケーラビリティの向上などがある。技術的アプローチには、FastBFTモードを追加するなど、既存のコンセンサスメカニズムを複数のモードで動作させることなども絡んでくる。これには、コアブロックチェーンコンポーネントのスリム化バージョンの作成や、チェーン間通信のための標準化メッセージングおよびトランザクションフォーマットの開発が含まれる。
ユースケースには、DApp用にカスタマイズされたパートナーチェーン、パートナーチェーンでの新技術のテスト、コンソーシアム用のプライベートパートナーチェーンなどがある。
今後の開発は、複数のコンセンサスソースを統合し、シームレスなチェーン間通信を可能にし、チェーン間トランザクションのための明確なプロトコルを定義し、AVSインタラクションのための標準インターフェイスを開発し、コミュニティガバナンスを確立することに焦点を当てる。
Hydra
Hydra(ハイドラ)においては、ガバナンスツールなど新しいユースケースを探求し、スケーラビリティとパフォーマンスを引き続き強化する。
Hydra Doomの成功を基盤として、Hydraのスケーラビリティを活用してCardanoエコシステムに利益をもたらす可能性のあるユースケースを特定し、開発する。
L1において大量の情報を管理するという課題に対処しつつ、分散型ガバナンスの議論と投票のためのプラットフォームとしてのHydraの使用を探る。
Midgard
Midgard(ミッドガルド)はCardano初のオプティミスティックロールアップフレームワークであり、EUTXOモデルを活用して、中央集権型シーケンサーやカストディアン型マルチシグに依存することなく、パーミッションレス操作、効率的な不正防止、検閲耐性を実現する。このユニークな設計により、Cardanoの堅牢なセキュリティと分散性を維持しながら、高スループット、低料金のトランザクションを実現する。オフチェーントランザクションをオンチェーンでコンパクトな表現にまとめることで、Midgardは、活動の増加がCardano L1に直接利益をもたらすことを保証し、分散型アプリケーションのためのサステナブルで革新的なエコシステムを実現する。
ファイナリティ(Peras)
Peras(ぺラス)は、トランザクション決済時間の短縮を目的としたOutoboros Praosプロトコルの拡張版である。現在のPraos(プラオス)プロトコルでは、新しいブロックは確率的に追加され、一般的に最長ブロックチェーンが有効なものとみなされる。Perasはステークプールオペレーター(SPO)に投票メカニズムを組み込むことによって新しいアプローチを導入した。
SPOは特定のブロックを支持する投票を行うことで、チェーン内でのブロックの重みを効果的に増加させることができる。この「投票」メカニズムにより、もっとも有効なチェーンでのコンセンサスを高速化でき、トランザクションのファイナリティの高速化につながる。トランザクションのファイナリティを高速化することで、ユーザーエクスペリエンスが大幅に向上し、より効率的でタイムリーなトランザクションが可能になる。
開発者エクスペリエンスとユーザーエクスペリエンス
開発者エクスペリエンスとユーザーエクスペリエンスの向上は、より広範な普及を促すために不可欠である。
開発者のブロックチェーンインタラクションを簡素化するために、さまざまな言語でライブラリーを作成する。
RPC機能を拡張してクエリとトランザクションの構築をサポートし、ノードサービスとのシームレスな統合を可能にする。
パートナーチェーンのサポートなど、開発者が特定のニーズに合わせてカスタムチェーンインデクサーを作成できるようにする。NATS Core Pub/Subメッセージングシステムにブロックと台帳イベントの変換層を作成することは、インデクサーフレームワークの例として使用できる。
データAPIサービスを分散化して中央集権的なプロバイダーへの依存を減らし、SPOを強化する。
ローカルノードの使用を促進し、フルノードとウォレットとのインタラクション規格を開発する。
さまざまなノード実装間でのトレース、ロギング、監視のための統一規格を確立する。
プログラム可能な資産
プログラム可能な資産の機能を拡張することで、分散型アプリケーションの新たな可能性が開かれる。
Cardanoのプログラム可能な資産の機能強化は、DAppの可能性を最大限に引き出すために不可欠である。単純な移転だけでなく、オンチェーンの資産機能を拡張し、複雑なプログラマブルロジックを可能にする。こうした進歩により、開発者は革新的なDAppを構築し、分散型IDのためのSBT(ソウルバウンドトークン)や他のウォレットへトランザクションできないトークン、または、カストディアン規制型ステーブルコインメカニズム、クリエイターをサポートするためのロイヤルティメカニズムなどのユースケースを探求できるようになる。
ネイティブトークンを超えた新しい種類のプログラム可能な資産を可能にするフレームワークを開発する。
UTXOインテント署名は、ユーザーがUTXOを特定の条件下で使用する意思を示すことを可能にし、ユーザーの資金の所有権を維持しながらスワップを容易にすることで、分散型取引所インタラクションを強化する。
分散型IDやその他のアプリケーションのためのSBTの使用を探る。
クリエイターを支援し、イノベーションを奨励するロイヤルティメカニズムを実装する。
USDC/USDTなどのポリシーベースのメカニズムを通じて、Cardanoでカストディアン規制型ステーブルコインの発行を可能にする。
複数ノード実装
複数ノード実装の開発とメンテナンスは、Cardanoの回復性と検閲耐性にとって極めて重要だ。ただしそれは、適切に実装され、安全な仕様に準拠している場合に限られる。この多様性は分散型ピアレビューの形でセキュリティを強化する。これは、さまざまなチームが各コードベースを精査し、潜在的な欠陥を悪用される前に特定して対処する可能性を高めるためだ。さらに、多様な実装は開発プロセス自体を分散化し、単一の組織に依存することに伴うリスクを低減する。この分散型開発モデルにより、進化を続けるCardanoネットワークにさまざまなチームから独自の視点とアプローチがもたらされ、より堅牢で適応性の高いエコシステムが醸成される。つまるところ、より高品質で独立したノードの実装があればあるほど、Cardanoはより強力になり、その検閲耐性と分散性が高まり、長期的な実行可能性と成功が保証される。
Cardanoにおけるノードの適合性の確保は、厳密な形式仕様記述に大きく依拠している。これらの仕様はノード実装のための決定的なガイドとして機能し、ここにはすべての準拠ノードに期待される正確な動作と機能が詳述されている。これにより、プロパティテストを自動的に抽出でき、ノード実装が仕様に完全に適合していることを実証できる。こうした細心の注意を払って作成された仕様に従うことで、ノード開発者はより広いCardanoネットワークと相互運用可能で互換性のある実装を作成することができる。ノードの構築と設定のための具体的で実用的な指示とガイドラインを提供することによって、既存の規格との一貫性と準拠が保証される。この正確な仕様の組み合わせは、Cardanoネットワークの完全性と安定性を維持し、すべての参加ノードが合意されたルールとプロトコルに従って動作することを保証するために不可欠である。
SPOインセンティブの改善
コミュニティは、ステークプールオペレーターに対する改善可能なインセンティブを特定した。以下は評価可能対象案である。
ガバナンス経由で変更投票できるmin-marginパラメーターの導入
a0の出資利益曲線の変更
注:本ビジョンおよびロードマップはハイレベルな概観であり、現在進行中の研究、コミュニティからのフィードバック、技術の進歩に基づいてさらに洗練、改訂される。これは、TSC調査結果に基づいている。本ロードマップの最初の執筆者は、Intersectプロダクト委員会のSam Leathers委員長である。
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